FUN EAT MAKERS in Okuma

FUN EAT MAKERS in Okuma

敷地は、福島県大熊町の中央産業拠点。大熊町は東日本大震災後長期間立ち入り禁止となっていたが、2022年に全域の避難指示が解除され、脱炭素を軸とした復興が進められているエリアである。その復興施策の中核として、地域経済の活性化と移住・定住人口の増加を目指し、働く場の創出を目的に中央産業拠点が整備された。

ブランド立ち上げ時から、この場所に人が戻るためには何が建つべきか議論を重ね、工場単体の機能を持つ建築物を建てるのではなく、生産・消費・滞在を兼ね備えたオープンな場所、「FUN EAT MAKERS in Okuma」を作ることを提案した。それは同時に、企業が魅力的な公共の場をどう作り上げていくかがテーマにもなった。

敷地内には施設に加え、生産機能を備えたビニールハウスやキウイ園、来訪者のアクティビティを誘発するビオトープや広場も計画されており、敷地全体を通じて町の人々に開かれた場を提供することを意図している。建築においては、植物工場、加工場、レストランなど、それぞれの空間に求められる機能や条件が異なるため、各施設にある程度の独立性を持たせる設計とした。その上で、全体としての一体感を生み出すために、一つながりの屋根を架け、各所の間にさまざまな軒下空間を設けている。これらの軒下は、内部空間同士を適度な距離感でつなぐだけでなく、隣接するビオトープやキウイ園、広場などの外部空間とも連携し、多様な使い方ができるよう計画した。

「大熊に人を戻したい! 自分たちがやらないと人生後悔する。だから協力して!」

これは、クライアントから最初に相談を受けた際の言葉である。

通常、初回の打ち合わせでは事業概要や予算についての話が中心となるが、このときは大熊町の未来に対する強い想いが会話の大半を占めていたことを、今でもよく覚えている。それだけ、クライアントが大熊町に対して熱い想いを抱いていたのだと思う。

その言葉に突き動かされて始まったこのプロジェクトも、2025年6月14日にようやく施設のオープンを迎えることとなった。

企画構想の初期段階から竣工に至るまで、クライアントと二人三脚で走り抜けることができたことに、改めて深く感謝したい。

PROJECT OVERVIEW

物件名      :     FUN EAT MAKERS in Okuma
サイト      :     https://www.instagram.com/p/DJiZoY6ymDc/
所在地      :     〒979-1308 福島県双葉郡大熊町下野上原94番地5
用途       :     工場、飲食店、店舗
発注者      :     株式会社コネクトアラウンド
延床面積     :     1,282.87平方メートル
設計期間     :     2021年12月1日~2024年7月22日
工事期間     :     2024年7月23日~2025年5月23日
担当       :     青木大輔(クリエイティブディレクション・マスタープラン・建築設計)
建築PM     :     C&R社・松葉力
構造設計     :     ロウファットストラクチュア・横山太郎
設備設計     :     山崎設備設計・山崎純悟
外構設計     :     マインドスケープ・柳原博史
施工       :     クレハ建設
協力       :     C&R社(建築設計)
         :     横山香(建築設計)
         :     ジャンブルジャンクション・加藤寛之(ブランドプランニング)
         :     K Light Studio(照明計画)
         :     UMEZOO・梅津信吾(フードディレクション)
         :     ドーワテクノス・江川慎司(食品加工コンサルティング)
         :     スパイスキューブ・須貝翼(栽培ユニット)
         :     AGS・向後武彦(ビニールハウス設計・施工)
         :     明治大学(栽培技術・知財提供 )
写真       :     戸室健介(1,2,3,5,9,11枚目)